紅簾石とバラ輝石(ピーモンタイト&ロードナイト)

埼玉県長瀞といえば石畳や川下りで有名な東京の奥座敷として、よく知られていますが、地質学者や地質学に興味のある人にとっては、明治初期からさかんに調査・研究された日本の地質学揺籃の地のひとつである、という深い感慨を覚える地でもあります。

長瀞の上流部の親鼻付近では、ひじょうに美しいピンク色の岩石が分布しています。その名を「紅簾石石英片岩 (Piemontite quartz schist)」と言い、ぎゅっと圧力をかけられて形成された広域変成岩のひとつです。その変成条件は深さ地下10〜20kmに相当する圧力と、400〜500℃の温度という、ごく普通の条件なのですが、この岩石の分布が地球上で限定されているのは、かえって不思議なことです。

日本では長瀞以外に中央構造線の南側に添って、長く東西に延びた三波川変成帯中によく見られ、四国の徳島、愛媛両県にも良い産地があります。15年ほど前に愛媛県土井町関川の川原で目にも鮮やかな本岩がいともたやすく拾えたことに感激しました。(今は展示室にあります。)

「紅簾石」は緑簾石という多様な生成環境に出現する鉱物の仲間ですが、上記のように広域変成岩以外では、ある種の深成岩、火山岩中の石英脈のみに見られるだけです。この出現率の低さは成分に求められるでしょう。「紅簾石」には、主成分として3価マンガン、Mn3+イオンが含まれ、それらがピンク〜赤系の発色原因にもなっています。 「そんなにキレイなものなら磨いてみたい。」と誰もが思います。実際に磨いてみましたが、予想通り一筋縄ではいかないことはすぐに分かりました。やはり、結晶片岩です。高い圧力を受けて再結晶した鉱物でできていますから、「片理」という一方向にはがれやすい(割れやすい)性質があり、ドロップなどの形をとりにくいという困難さがありました。また、関川のものに関しては、多孔質のものもあり、ツヤ出しが難しい場面がありましたが、それでもうまく磨けますと、特に絹雲母を含むものはキラキラとピンクに輝き、なかなか美しいものに仕上がりました。

Piemontite np 最近、ニューストーンとして、南アフリカ産の本岩の研磨品を見る機会がありましたが、ピンクの「紅簾石」と白い石英が互い違いに層状に並んでいる典型的な「片理構造」が見られました。これだけでも、他の類似した石との識別の根拠になりますが、外見上、最も似ている「バラ輝石(ロードナイト)」との違いをもう少し詳しく見てみましょう。
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南アフリカ産 紅簾石 石英片岩(ピーモンタイト・クォーツシスト)
*美しく研磨されたピーモンタイトビーズ

rhodonite np「バラ輝石」は国内ではもちろん、海外でも変成マンガン鉱床中に産します。もともと堆積岩が圧力ではなく、主に熱によって変成を受けたものですので、堆積岩の「層理」にあたる粗い縞模様を見ることはありますが、外的な力でペラペラとはがれるような「片理」はまったくありません。「バラ輝石」の着色原因は2価マンガン、Mn2+イオンで「紅簾石」のピンクよりややきつい感じがします。

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南アフリカ バラ輝石(ロードナイト)
*ロードナイトのビーズ
さらに重要で役立つ情報は、その比重です。「バラ輝石」は約3.7ですが、一方、「紅簾石石英片岩」は、約2.6の石英と約3.4の「紅簾石」の混合物ですので、その比重の差は歴然。待ってみると「バラ輝石」より軽く感じます。
日本天然石協会 相談役  秦泉寺 道

*現在、国内および海外の販売業者の間で、ピーモンタイト系の石をロードナイトとして販売されている場合が多く見受けられます。お取り扱いされる時は、秦泉寺先生のレポートをお読みになり十分ご注意下さい。西田 智清

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